ニーズとひらめき【07】入れ子の構造にしよう!
今回の「ひらめきのパターン」は、【07】入れ子の構造にしよう!です。
このパターンがあてはまるニーズ(解決したい課題)もご紹介します。
「【07】入れ子の構造にしよう!」は、複数のモノを「入れ子の構造」にしようという考え方です。
ベースの発明原理は「発明原理7入れ子」です。
複数のモノがあってかさばる(場所をとる)場合は、図1のイメージ図のように「入れ子の構造」にすればコンパクトになります。
【07】入れ子の構造にしよう!には、次の4つのサブパターンがあります。
- [07a]入れ子の構造にしよう!
- [07b]複数を入れる構造にしよう!
- [07c]通り抜けられる構造にしよう!
- [07d]多層構造にしよう!
このサブパターンを、あてはまるニーズ(解決したい課題)と事例イラストを用いて説明します。
あてはまるニーズ(解決したい課題)
表1は、サブパターンと、それがあてはまるニーズ(解決したい課題)の表です。
※ニーズ(解決したい課題)は代表的なものを示しています。それぞれのサブパターンには、あてはまる別のニーズもありますが、簡単にするため、1つのニーズに絞っています。
[07a]入れ子の構造にしよう!
サブパターン【07a】は「入れ子の構造にしよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「使わない時は邪魔(じゃま)になる」があります。
ボールペンのキャップには、次のような機能があります。
- インクが服などに付くのを防ぐ
- ペン先を保護する
そのため、ボールペンにはキャップが必要なのですが、「キャップを使わない時(=書いている時)」は邪魔(じゃま)になります。
書く時はキャップを(ペン先の)反対側にかぶせておくこともできますが、そのためには両手を使う必要があるので少し面倒です。
それで、図2のような「ペン先が収納されるボールペン」が誕生しました。このペンはノック操作で、ペン先が出入りします。
ペン先を本体(ボールペン)の内部に入れることで、キャップが不要となりました。またペン先の出し入れが、片手で操作できるので便利です。
[07b]複数を入れる構造にしよう!
サブパターン[07b]は「複数を入れる構造にしよう!」です。[07a]では、入れ子の構造にすることを考えましたが、[07b]では、さらに「複数のモノ」を入れる構造にすることを考えます。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「手間(労力、時間など)を減らしたい」があります。
例えば「複数の乗用車を運ぶ」場合、それぞれの乗用車が自走すると、台数分の運転手が必要になり手間(労力)がかかります。
そこで図3のように、複数の乗用車を大型トラックでまとめて運べば、運転手が少数ですみます。
大型トラックを、複数のモノ(乗用車)を入れる構造にすれば、一度に複数(4台)の乗用車を運ぶことができます。
[07c]通り抜けられる構造にしよう!
サブパターン[07c]は「通り抜けられる構造にしよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「使わない時は長さが邪魔になる」があります。
長い物を測るためには、長いものさし(スケール)が必要です。しかし長いものさし(スケール)は、持ち運びには不便です(長さが邪魔になります)。
その場合は、巻き尺が便利です。図4のように、巻き尺では、スケール(直尺)がケースに収納されます。そのために、ケースの穴の中をスケールが通り抜けられる構造になっています。
長い物の長さを測る時はスケールを引き出して使い、使用後はケースに収納します。こうすることで、長いスケールがコンパクトになり、持ち運びが便利になります。
[07d]多層構造にしよう!
サブパターン【07d】は「多層構造にしよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「複数の機能を持たせたい」があります。
フライパンには次のような様々な機能が要求されます。
- 焦げ付きにくい
- 熱伝導率が高い
- 保温性が良い
これらの複数の機能を実現するために様々な工夫が行われていますが、その一つに図5のような「表面への多層コーティング」があります。
コーティングを多層にすることで、様々なメリットを提供するフライパンが売られています。
【07】入れ子の構造にしよう!は以上です。
入れ子の構造にする方法として、あるモノの中に「1つのモノ」を入れたり、「複数のモノ」を入れる方法を考えました。さらに、あるモノの穴の中を通り抜けられる構造にすることや、多層構造にすることを考えました。
入れ子にする方法にも、様々な方法があることがご理解いただけたと思います。
次回は、モノに働く力を利用することを考えます。
ニーズとひらめき【06】複数の機能を行えるようにしよう!
前回の【05】組み合わせよう!では、2つを組み合わせることを考えました。今回は、組み合わせの数や種類を増やすことを考えます。
今回の「ひらめきのパターン」は、【06】複数の機能を行えるようにしよう!です。
このパターンがあてはまるニーズ(解決したい課題)もご紹介します。
「【06】複数の機能を行えるようにしよう!」は、1つのモノで、複数の機能を行えるようにしよう、または、組合せの数や種類を増やそうという考え方です。
ベースの発明原理は「発明原理6汎用性」です。
図1のイメージ図は、「1枚の表示盤」で「様々な数値が表記」できる様子を表しています。
【06】複数の機能を行えるようにしよう!のサブパターンは、次の1つです。
- [06a]複数の機能を行えるようにしよう!
(ここでは、メインパターンとサブパターンは同じ内容になっています)
このサブパターンを、あてはまるニーズ(解決したい課題)と事例イラストを用いて説明します。
あてはまるニーズ(解決したい課題)
表1は、サブパターンと、それがあてはまるニーズ(解決したい課題)の表です。
※ニーズ(解決したい課題)は代表的なものを示しています。それぞれのサブパターンには、あてはまる別のニーズもありますが、簡単にするため、1つのニーズに絞っています。
[06a]複数の機能を行えるようにしよう!
サブパターン[06a]は「複数の機能を行えるようにしよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「コンパクトにしたい」があります。
事例を紹介します。図2のように、スマートフォンには、次のような様々な機能があります。
「電話する/メールを送受信する/写真を撮る/その他 …」
様々の機能がコンパクトにまとめられているので、スマートフォンが1台あれば、多くの事ができます。「スマートフォンがあればOK」とよく言われますが、生活には欠かせない存在になっていますね。
【06】複数の機能を行えるようにしよう!は以上です。
今回は、1つのモノが「複数の機能を行える」ようにすること(または、組合せの数や種類を増やすこと)を考えました。スマートフォン以外にも、多くの商品(製品やサービス)でこのパターンが使われていると思います。
次回は、複数のモノを「入れ子の構造」にすることを考えます。
ニーズとひらめき【05】組み合わせよう!
新しいものをつくり出したり、考え出したりする方法として、「何かと何かを組み合わせる」ことは、とても効果的だと言われています。
組み合わせ方には、様々な方法があります。また組み合わせる対象(なにとなにを組み合わせるか)も様々です。
図1は、「AにBを組み合わせる(A→A+B)」イメージ図ですが、AやBには次のように様々なものが当てはまります。
- (1)「A(モノ)+B(モノ)」
- (2)「 A(モノ)+B(機能)」
- (3) 「A(機能)+B(機能)」
一般的に「組み合わせ」というと、 (1) のように「モノ+モノ」がイメージされることが多いと思います。(2)「モノ+機能」や (3)「機能+機能」のように、組み合わせる対象をモノだけから機能(といったモノ以外のもの)にまで広げて考えてみましょう。
アイデアの範囲を広げたり、アイデアのレベルを向上させることにつながると思います。
今回は「ひらめきのパターン【05】組み合わせよう!」です。
このパターンがあてはまるニーズ(解決したい課題)もご紹介します。
「【05】組み合わせよう!」は、「あるモノ」と「別のモノ」を組み合わせてみようという考え方です。
ベースの発明原理は「発明原理5組合せ」です。
図1のイメージ図は、あるモノ(A)と別のモノ(B)を組み合わせる様子を示しています。
【05】組み合わせよう!には、次の2つのサブパターンがあります。
- [05a]組み合わせよう!
- [05b]同時に作動させよう!
2つのサブパターンを、あてはまるニーズ(解決したい課題)と事例イラストを用いて説明します。
あてはまるニーズ(解決したい課題)
表1は、サブパターンと、それがあてはまるニーズ(解決したい課題)の一覧表です。
※ニーズ(解決したい課題)は代表的なものを示しています。それぞれのサブパターンには、あてはまる別のニーズもありますが、簡単にするため、1つのニーズに絞っています。
[05a]組み合わせよう!
サブパターン[05a]は「組み合わせよう!」です。モノや機能を組み合わせてみようという考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「製品などの付加価値をより高めたい」があります。
事例を紹介します。図2のように、洗濯乾燥機では「洗濯する機能」と「乾燥する機能」という2つの機能が組み合わされています。洗濯物が、洗濯後にそのまま(自動で)乾燥されるので、とても便利ですね。
[05b]同時に作動させよう!
サブパターン[05b]は「同時に作動させよう!」です。[05a]の「組み合わせよう!」では、(時間的なことは考えないで)組合せることだけを考えました。[05b]では、(時間的なことまで考えて)同時に作動させることを考えます。このように発展させて考えることで、製品などの付加価値をより高めるアイデアにつなげることができます。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には([05a]と同じく)「製品などの付加価値をより高めたい」があります。
事例を紹介します。図3のように、加湿空気清浄機では「加湿する機能」と「空気を清浄する機能」の2つの機能を同時に行います。
ニーズとひらめき【05】組み合わせよう!は以上です。モノや機能を組み合わせたり、時間的に同時に作動させることを考えました。
今回の【05】では、2つを組み合わせることを考えましたが、次回の【06】では、組み合わせの数や種類を増やすことを考えます。
ニーズとひらめき【04】非対称にしよう!
今回は「ひらめきのパターン【04】非対称にしよう!」です。
このパターンがあてはまるニーズ(解決したい課題)もご紹介します。
「【04】非対称にしよう!」は、あるモノが対称(な形)である場合は、それを非対称(な形)にしてみようという考え方です。
ベースの発明原理は「発明原理4非対称」です。
図1に【04】のイメージ図を示します。このイメージ図は、対称な形を、非対称な形に変える様子を示しています。
【04】非対称にしよう!には、次の2つのサブパターンがあります。
- [04a]非対称にしよう!
- [04b]非対称の度合いを増やそう!
2つのサブパターンを、あてはまるニーズ(解決したい課題)と事例イラストを用いて説明します。
あてはまるニーズ(解決したい課題)
表1は、サブパターンと、それがあてはまるニーズ(解決したい課題)の一覧表です。
※ニーズ(解決したい課題)は代表的なものを示しています。それぞれのサブパターンには、あてはまる別のニーズもありますが、簡単にするため、1つのニーズに絞っています。
[04a]非対称にしよう!
サブパターン[04a]は「非対称にしよう!」です。対称なモノを、非対称にしてみようという考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「装置などを使いやすく(自然な動作で使えるように)したい」があります。
例えば図2のように、パソコンのマウスには左右非対称の形のものがあります。
左右非対称にすることで、手や指に合う形にできます。操作しやすい、持ちやすいなどのメリットが得られます。
[04b]非対称の度合いを増やそう!
サブパターン[04b]は「非対称の度合いを増やそう!」です。既に非対称なモノであれば、さらに非対称の度合いを増やしてみようという考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「既に非対称なモノをさらに使いやすくしたい」があります。
例えば図3のように、自動車のメーターパネルには、次のようなレイアウトのものがあります。
- (1) 中央に大きなメーター
- (2) 右側にやや大きなメーター
- (3) 左側に小さなメーター
メーターを見る頻度に合わせて、次のようにレイアウトすることで、全体として見やすくなります。
- 一番よく見るメーター→ (1) に配置
- 次によく見るメーター→ (2) に配置
- たまに見るメーター→ (3) に配置
メーターの「サイズ(大きさ)」や「レイアウトの位置」といった「非対称の度合い」を調整することで、見やすいパネルにすることができます。
既に非対称なモノを、さらに使いやすくしたいという場合は、非対称の度合いを増やすことでさらに使いやすくできないかを考えてみましょう。
ニーズとひらめき【04】非対称にしよう!は以上です。
次回は【05】組み合わせよう!です。
「あるモノ」と「別のモノ」を組み合わせてみようという考え方をご紹介します。
ニーズとひらめき【03】非均一にしよう!
今回は「ひらめきのパターン【03】非均一にしよう!」です。
このパターンがあてはまるニーズ(解決したい課題)もご紹介します。
「【03】非均一にしよう!」は、あるモノや、その周囲(の環境)が、均一な(どれも同じ/一様である)状態である場合は、それを非均一な(同じでない/偏っている)状態にしてみようという考え方です。
ベースの発明原理は「発明原理3局所性」です。
図1に【03】のイメージ図を示します。このイメージ図は、均一な(一様である)状態を、非均一な(偏っている)状態に変える様子を示しています。
【03】非均一にしよう!には、次の4つのサブパターンがあります。
- [03a]非均一にしよう!
- [03b]まわりを非均一にしよう!
- [03c]ある部分を最適にしよう!
- [03d]異なる機能を持たせよう!
4つのサブパターンを、あてはまるニーズ(解決したい課題)と事例イラストを用いて説明します。
あてはまるニーズ(解決したい課題)
表1は、サブパターンと、それがあてはまるニーズ(解決したい課題)の一覧表です。
※ニーズ(解決したい課題)は代表的なものを示しています。それぞれのサブパターンには、あてはまる別のニーズもありますが、簡単にするため、1つのニーズに絞っています。
[03a]非均一にしよう!
サブパターン[03a]は「非均一にしよう!」です。均一な状態を、非均一な状態にしてみようという考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「新たな効果を得たい」があります。
効果には次のような意味があります。
- 一般的な意味:ある行いや工夫によって得られる、望ましい結果やききめ
- 科学的な意味:ある原因から結果として生じる現象
それで、ここでは効果を次のような意味で用います。
- ある目的を持った行い(工夫)により得られた結果(ききめ)
例えばゴルフボールに対しては、「遠くまで飛ばせるようにしたい」という目的を持って、様々な工夫がなされてきました。
その1つが、図2のように、表面に多くのディンプル(小さなくぼみ)をつけるというものです。
均一な(ツルツルの)表面を、非均一な(くぼみがたくさんある)表面にしました。
その結果、次の効果が得られるようです。
- 揚力(空気中を動く物に、上向きに働く力)を発生させる
- 空気抵抗を減らす
これらの効果により、ボールを遠くまで飛ばすことができるようになります。
この例のように「何か新たな効果を得たい」場合に、そのモノの表面に着目することがあります。
この場合、[03a]非均一にしよう!が使えます。均一な状態を、非均一な状態にしてみようという考え方です。
均一な(例えばツルツルな)表面を、非均一な(例えば凸凹な)表面に変えることで、何か良い効果を得ることができないかを考えます。
このような観点で得られた効果は他にもあると思います(靴底表面の細かな凸凹構造による滑り止め効果など)。皆さんも探してみはいかがでしょうか?
[03b]まわりを非均一にしよう!
サブパターン[03b]は「まわりを非均一にしよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「新たな効果を得たい(そのモノだけでは難しい場合)」があります。
「新たな効果を得たい」というニーズは[03a]と同じです。[03a]では、あるモノを非均一にすることを考えますが、そのモノだけでは難しい場合があります。
この場合、[03b]まわりを非均一にしよう!が使えます。そのモノの「まわり(周囲)の環境」を非均一にしてみようという考え方です。
例えばプロジェクターの映像を見ながら、手元の資料も見る場合、部屋が暗いと資料は見えにくいですよね。
その場合は図3のように「スクリーン部は暗く」して「受講者席は明るく」します。そうすることで、映像も資料も両方が見えやすくなります。
プロジェクターというモノ自体を非均一にするのではなく、その「まわり(周囲)の環境」を非均一にすることを考えました。つまりプロジェクターのまわり(周囲)である部屋の環境を非均一にします。
部屋の中に「暗い部分」と「明るい部分」をつくることで、映像と資料の両方が見えやすくなります。
このように、「新たな効果を得たいが、そのモノだけでは難しい場合」は、そのモノの「まわり(周囲)の環境」を非均一にしてみると、効果が得られることがあります。
[03c]ある部分を最適にしよう!
サブパターン[03c]は「ある部分を最適にしよう!」です。全体を最適にすることが難しい場合に使える考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「大きな変更は行わずに改善したい」があります。
例えば、寒い季節は、部屋全体を暖かくする(つまり大きな変更を行う)と電気代などが高くなります。図4のようにこたつを使えば、部屋全体は寒くても、こたつの中は暖かくできます。
こたつの中だけを「最適な(暖かい)状態」にすることで、効率よく暖を取ることができます。
「部屋全体を暖かくする」という大きな変更は行わずに、こたつを使うことで効率よく暖を取るという改善を行った例ですね。
[03d]異なる機能を持たせよう!
サブパターン[03d]は「異なる機能を持たせよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「コンパクトにしたい」があります。
この考え方を使って製品などに複数の機能を持たせることで、製品をコンパクトにすることができます。
例えば図5のように、コントローラーの十字キーでは、4つの部分(上/下/左/右)に、それぞれ異なる機能を持たせています。
こうすることで、1つの部品で複数の機能を提供できます。その結果、コントローラー(製品)をコンパクトにすることができます。
ニーズとひらめき【03】非均一にしよう!は以上です。
次回は【04】非対称にしよう!です。
あるモノが対称(な形)である場合は、それを非対称(な形)にしてみようという考え方をご紹介します。
ニーズとひらめき【02】分離しよう!
今回は「ひらめきのパターン【02】分離しよう!」です。
このパターンがあてはまるニーズ(解決したい課題)も紹介します。
(全体の中で)ある部分が邪魔である、また逆に、ある部分だけが必要である場合、全体から「その部分を分離しよう」という考え方です。
ベースの発明原理は「発明原理2分離」です。
図1のイメージ図は、全体から「ある部分を分離する」様子を示しています。
【02】分離しよう!には、次の4つのサブパターンがあります。
- [02a]悪い(不要な)部分を取り除こう!
- [02b]良い(必要な)部分を取り出そう!
- [02c]空間(部分、場所など)で分離しよう!
- [02d]時間で分離しよう!
4つのサブパターンを、あてはまるニーズ(解決したい課題)と事例イラストを用いて説明します。
- あてはまるニーズ(解決したい課題)
- [02a]悪い(不要な)部分を取り除こう!
- [02b]良い(必要な)部分を取り出そう!
- [02c]空間(部分、場所など)で分離しよう!
- [02d]時間で分離しよう!
あてはまるニーズ(解決したい課題)
表1は、サブパターンと、それがあてはまるニーズ(解決したい課題)の一覧表です。
※ニーズ(解決したい課題)は代表的なものを示しています。それぞれのサブパターンには、あてはまる別のニーズもありますが、簡単にするため、1つのニーズに絞っています。
【02】分離しよう!では全てのサブパターンで、あてはまるニーズ(解決したい課題)は共通です。「あるモノを改善したい」というニーズ(課題)は共通ですが、状況に応じて使うサブパターンが異なります。
例えば、「あるモノを改善したいが、一部分だけが悪い」場合は、[02a]悪い(不要な)部分を取り除こう!を使います。
また、「あるモノを改善したいが、一部分だけが良い」場合は、[02b]良い(必要な)部分を取り出そう!を使います。
[02a]悪い(不要な)部分を取り除こう!
サブパターン[02a]は「悪い(不要な)部分を取り除こう!」です。全体の中で「ある部分」だけが悪い、または不要の場合は、「その部分だけを取り除いてしまおう」という考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)と状況には「あるモノを改善したいが、一部分だけが悪い」があります。
例えば、図2のように、お気に入りのセーターに毛玉ができてしまいました。そのため、セーター全体が悪く見えてしまいます。これは、「セーターを改善したいが、一部分(毛玉になった部分)だけが悪い」という状況です。
このような状況では、[02a]悪い(不要な)部分を取り除こう!が使えます。
この場合は、毛玉(悪いもの)だけを取り除きます。そうすれば、セーターが改善されて気持ちよく着ることができます。
[02b]良い(必要な)部分を取り出そう!
サブパターン[02b]は「良い(必要な)部分を取り出そう!」です。全体の中で「ある部分」だけが良い、または必要という場合があります。その場合は、その部分だけを取り出して使おうという考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)と状況には「あるモノを改善したいが、一部分だけが良い」があります。
例えば、古くなった洋服を処分する時に、その洋服にお気に入りのボタンが付いていたとします。「洋服自体は古くて使えないが、ボタンだけはお気に入り(良い)」という状況です。
このような状況では、[02b]良い(必要な)部分を取り出そう!が使えます。
そのボタンだけを取り外して保管しておきます(図3)。そうすれば、他の洋服のボタンとして、また修理用にも使うことができます。
[02b]良い(必要な)部分を取り出そう!については以上です。
ここまでの[02a]と[02b]では「全体から、ある部分を分離する」ことを考えました。つまり、「まずは分離してみる」ことを考えました。
次の[02c]と[02d]では、分離する際の「分離のしかた」を考えます。分離のしかたについては、次の2つの方法を考えます。
- 空間で分離する
- 時間で分離する
「全体から、ある部分を分離する」という場合、一般的には「1.空間で分離する」の方がイメージされると思います。例えば「製品から、ある部品を取り出す」、または「建物から、ある部屋を隔離(かくり)する」といったことがイメージされると思います。
それに対して、「2.時間で分離する」という方法では、全体の中のある時間帯だけを分離することを考えます。
分離できる対象には、空間的なものだけではなく、時間的なものもあるという考え方です。これは「1.空間で分離する」に対して、さらにふみ込んだ考え方だといえます。
ではまず、「1.空間で分離する」から考えましょう。
[02c]空間(部分、場所など)で分離しよう!
サブパターン[02c]は「空間(部分、場所など)で分離しよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)と状況には「あるモノを改善したいが、改善策を行うと空間的な無駄がでる」があります。
例えば食品には、冷蔵で保存したいものと、冷凍で保存したいものがあります。それぞれに適した温度で保存するためには、冷蔵庫と冷凍庫の2台が必要になります。キッチンなどの限られた場所に、2台を置くとその空間が無駄になります。
このような状況では、[02c]空間(部分、場所など)で分離しよう!が使えます。
図4のように、冷蔵庫から冷凍室を分離して、その空間(冷凍室)だけ冷凍温度に設定します。こうすれば、1つの冷蔵庫で「冷蔵保存と冷凍保存」の両方ができます。
キッチンに「冷蔵庫と冷凍庫の2台を置く」という空間的な無駄をなくすことができます。
次は、「2.時間で分離する」を考えます。
[02d]時間で分離しよう!
サブパターン[02d]は「時間で分離しよう!」です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)と状況には「あるモノを改善したいが、改善策を行うと時間的な無駄がでる」があります。
通勤や通学時のラッシュは大変ですよね。対策としては、電車の「運行本数を増やす」方法があります。でも1日全体の運行本数を増やしてしまうと、混雑していない時は、無駄が出てしまいます。
このような状況では、[02d]時間で分離しよう!が使えます。
図5の時刻表(架空です)のように「通勤ラッシュの時間帯だけ」電車の運行本数を増やすという対応を行います。
このような対応を行うことで、すいている時間帯に多くの本数を走らせるという無駄をなくすことができます。
ニーズとひらめき【02】分離しよう!は以上です。
次回は【03】非均一にしよう!です。
あるモノや、その周囲(の環境)が、均一な(どれも同じ/一様である)状態である場合は、それを非均一な(同じでない/偏っている)状態にしてみようという考え方をご紹介します。
ニーズとひらめき【01】部分に分けよう!
今回から、様々な「ひらめきのパターン」をご紹介していきます。
また、ひらめきのパターンがあてはまるニーズ(解決したい課題)も合わせて紹介したいと思います。
1回目は、「ひらめきのパターン【01】部分に分けよう!」です。
大きな塊(かたまり)のままでは問題がある場合は、それを部分に分けていこうという考え方です。
ベースにした発明原理は「発明原理1分割」です。
図1に【01】のイメージ図を示します。このイメージ図では、大きな塊をまず2つに分けます、そしてさらに4つに分けていく様子を示しています。
【01】部分に分けよう!には、次の3つのサブパターンがあります。
- [01a]部分に分けよう!
- [01b]組立てや分解がしやすいように分けよう!
- [01c]さらに細かく分けよう!
3つのサブパターンを、あてはまるニーズ(解決したい課題)と事例イラストを用いて説明します。
あてはまるニーズ(解決したい課題)
表1は、サブパターンと、それがあてはまるニーズ(解決したい課題)の一覧表です。
※ ニーズ(解決したい課題)は代表的なものを示しています。それぞれのサブパターンには、あてはまる別のニーズもありますが、簡単にするため、1つのニーズに絞っています。
[01a]部分に分けよう!
サブパターン[01a]は「部分に分けよう!」です。様々なモノを「部分に分けてみよう」という考え方です。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「コンパクトにしたい」があります。
例えば、以前の携帯電話(ガラケー)では、画面サイズの拡大に対して、本体はコンパクトにしたいというニーズがありました。
それで図2のように、「画面部」と「操作部」に分けることで、折りたたみ可能となりコンパクトになりました。2つの部分に分けることでコンパクトになり、その結果、持ち運びが容易になりました。
[01b]組立てや分解がしやすいように分けよう!
サブパターン[01b]は「組立てや分解がしやすいように分けよう!」です。
[01a]は「部分に分けよう!」でしたが、[01b]は、どうせ分けるなら「組立てや分解がしやすいように分けよう!」というものです。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「使い勝手を良くしたい」があります。
例えば、椅子は休憩する時などは、とてもありがたい物です。でも使わない時は邪魔になります。
使わない時はコンパクトにしたいですよね、どうすれば良いでしょうか?
[01a]部分に分けよう!を使って、座面や背もたれが分割できるようにすればコンパクトにできます。
しかし、使うたびに、毎回(ねじなどで固定して)組み立てるのは大変です。これでは、使い勝手は良くなりません。
そこで[01b]組立てや分解がしやすいように分けよう!が使えます。
図3ように、折りたたみイスは、背もたれ、座面、脚部に分かれています。このように分けることで、収納する時は、折りたたみが簡単になります。また使用する時には、組み立てが簡単にできます。
部分に分ける時は、このように組立てや分解が簡単になるように分けると、使い勝手が良くなります。
[01C]さらに細かく分けよう!
サブパターン[01c]は「さらに細かく分けよう!」です。[01a]で「部分に分けたモノ」を、さらに細かく分けてみようというものです。
あてはまるニーズ(解決したい課題)には「さらに機能を向上したい」があります。
使い捨てのヒゲソリでは「剃り(そり)心地を良くしたい」というニーズに対して、従来の1枚刃を2枚刃にしました。(これは、[01a]部分に分けよう!の適用ですね)
刃の枚数が増えると、1枚の刃にかかる圧力が減ります。その結果、肌への負担が減り、剃り(そり)心地が良くなります。
その後、「さらに機能を向上したい」というニーズが出てきました。どうすれば良いでしょうか?
そこで使える考え方が、[01C]さらに細かく分けよう!です。
2枚刃をさらに細かく分けて3枚刃へ、そして3枚刃をさらに細かく分けて4枚刃にします。図4のように、ヒゲソリの刃を「2枚刃→3枚刃→4枚刃」というように進化させていきました。
刃の枚数がさらに増えると、1枚の刃にかかる圧力がさらに減ります。その結果、肌への負担がさらに減り、剃り(そり)心地もさらに良くなります。
この事例は、[01C]さらに細かく分けよう!をうまく使った例ですね。
他にも(既に分けたモノを)さらに細かく分けることで進化してきたモノが、いろいろとあると思います。このような観点で探してみると面白いと思います。
ひらめきのパターン【01】部分に分けよう!は以上です。
今回は次の事例をご紹介しました。
- 部分に分けることで、コンパクトにした事例
- 組立てや分解がしやすいように分けることで、使い勝手を良くした事例
- さらに細かく分けることで、さらに機能を向上させた事例